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仕切り直し、民主党混迷 政権「死に体」余儀なく バイデン氏撤退


仕切り直し、民主党混迷 政権「死に体」余儀なく バイデン氏撤退 ハリス氏巡る民主党有力者の立場(写真はAP、ロイター)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 バイデン米大統領が大統領選撤退を決断した。後継最有力候補のハリス副大統領が挙党態勢の構築を目指すが人気は低く、仕切り直しに民主党の混迷は極まる。バイデン氏が再選を断念したことで政権はレームダック(死に体)化を余儀なくされ、国際社会への影響力低下も避けられない。 (1面に関連)

 克服不能

 「はっとさせられるような数字だった」。バイデン氏が精彩を欠いた6月27日の討論会以降、悪化を続けた内部の世論調査の結果を知る関係者は明かす。公然と反旗を翻す民主党議員は増加の一途だったが、バイデン氏は強気を崩さなかった。共和党のトランプ前大統領を破った2020年大統領選や、民主党劣勢の下馬評を覆した22年中間選挙の経験が過信につながったのは疑いない。
 欧米メディアによると、決断したのは7月20日夜。新型コロナウイルスに感染し東部デラウェア州の私邸で療養中に、腹心数人から厳しい世論調査結果を見せられた。勝敗の鍵を握る激戦の6州全てでトランプ氏に敗北し、南部バージニア州や中西部ミネソタ州といった民主党優勢の州でも支持が大幅に後退との内容。厳しい現実が決め手となり、撤退声明の起草に入った。
 一夜明けた21日午前、バイデン氏はハリス氏ら数人に個別に電話し、撤退の意思を伝達。ホワイトハウスや陣営のスタッフに決断を伝えたのは、同日午後1時46分に声明を出す直前だった。

 期待と疑念

 撤退表明後、世代交代への期待からか民主党への献金が殺到し、米紙ニューヨーク・タイムズによると21日だけで計5千万ドル(約78億円)を超える記録的な額に。ハリス氏陣営関係者は、各州の代議員らに計数百件の「電話作戦」を実施。他の政治家が候補争いに名乗りを上げる展開を阻止しようと先手を打った。
 ハリス氏は「エリート臭が抜けない」(民主党支持者)とされ、国民の人気は高くない。暗殺未遂を切り抜けて勢いづくトランプ氏に、勝利できるかどうかを疑う見方も多い。
 バイデン氏は支持基盤の労働組合の後ろ盾を得て、前回大統領選では故郷の重要州、東部ペンシルベニアを奪還した。だが西部出身のハリス氏には足場がない。副大統領候補に同州のシャピロ知事らを起用し弱点を補ったとしても、接戦は必至とみられる。オバマ元大統領はバイデン氏の撤退の決断を称賛する一方、ハリス氏への支持は表明しなかった。

 復権に備え

 急速に求心力を失うバイデン氏を尻目に、各国はトランプ氏復権に備えた動きを本格化させている。ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援に消極的なトランプ氏だが、ウクライナのゼレンスキー大統領は共和党大会後に電話会談し祝意を示した。トランプ氏の大統領選での勝利も見越し、少しでも良好な関係を構築するための布石を打った格好だ。
 国際協調路線を取ってきたバイデン政権の影響力は、来年1月で終わりを迎えることが決まり、一層限られることになる。トランプ氏は「米国第一主義」に突き進む方針。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記と再び対話する意思を示すなどしており、首脳間の個人的関係に基づく予測困難な外交が再来すれば、日本を含む各国が気をもむ展開は不可避だ。(ワシントン共同=高木良平、新冨哲男)