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問われる司法の人権意識 日本の三権分立


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 自民党パーティー券裏金問題で刑事告発された現、元国会議員の42人の不起訴処分が7月8日に発表された。翌9日付で、新しい検事総長に初めて女性が就任した。史上初の女性の起用はニュースバリューがあり注目されたが、女性を盾に批判を和らげようという政治的判断なら、世間はメディアほど甘くない。日本の三権分立とは絵に描いた餅で、検事総長の任命は内閣が行い、天皇が認証する。政権に都合の良い人事が行われることになる。
 注目の首都知事選挙も終わったが、小池百合子知事をめぐる裁判が始まるだろう。公職選挙法違反で東京地検に告発状が出され、さらにカイロ大学首席卒業を自身の履歴に使い続けて来た学歴詐称でも、告発状が東京地検に出されている。新検事総長は、政権に忖度(そんたく)した判断をするのか、三権分立の誇りを失わないか、期待と不信が相半ばする。
 学歴疑惑を告発した小島敏郎氏は、自公政権と地下水脈でつながる都知事という強大な権力者を相手に、覚悟の孤独な戦いに一身を投じた。亡夫(編注・俳優の菅原文太氏)は、小島氏を、職業や世代の違いを超えて敬愛し、同志的結束で結ばれていた。岐阜県多治見市出身の小島氏とは、地方から東京に出てきた者同士の故郷愛や連帯感の意気投合もあったと思う。
 小池知事の選挙戦略だったのか、投開票まで1カ月を切るタイミングで低所得世帯に1万円の商品券を配布する政策を発表した。発表した時点では出馬表明をしていないが、買収行為と受け取られる懸念を分かっており、出馬表明を遅らせたとしか見えない。
 さらに、日本の司法の健全度が試される注目の裁判も始まる。東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件容疑で逮捕、拘留された角川歴彦氏が「人質司法で身体的、精神的苦痛を受けた」として東京地裁に提訴した。世界に悪名高い日本の「人質司法」は、容疑を認めない被疑者に対し、自白を強要する過酷な取り調べを行う司法風土の実態を言う。
 昨年末、立憲民主党の中谷一馬衆院議員が「いわゆる人質司法に関する質問主意書」を政府に提出し、政府が答弁を出した。政府の答えは、「(質問の)その意味するところが必ずしも明らかでないが」と質問内容にさりげなくケチを付け、さらに司法サイドとしては「適正に行われているものとして承知している」というあくびの出そうな官僚用語で答えている。国際的にも非難されてきた人質司法の非人道性、人権意識の欠如に、問題意識も危機感もないことが答弁から浮かび上がる。
 角川氏は、人質司法は国際人権法と憲法に違反するとして国を訴えているが、もし日本が戦争に巻き込まれ戦争犯罪を裁く事態が起きたとき、世界水準に遠い日本の司法の人権意識が世界から信頼されるか危うい限りだ。
 (辺野古基金共同代表)
 (随時掲載)