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過去に縛られ 安全見失う 福島第1と共通点も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の真下を走る断層は動く危険性がある―。原子力規制委員会が長年の懸案に決着をつけた。建物ごと原子炉が影響を受ける可能性があり、規制基準では運転を認めることはできない。原電は敦賀2号機の廃止という苦しい選択を迫られることになる。
 危険が放置されたまま長年運転されたという点では、事故を起こした東京電力福島第1原発(廃止決定済み)とも共通する。原発を守ろうとして肝心の安全性を損なう結果を招いてしまう事業者、過去に与えた「許可」に縛られ安全性を二の次にしてしまう行政。背景も2011年と同じだ。
 発端は20年前、原電が3、4号機の増設を政府に申請したことだ。原電は審査で、活動性なしとしてきた敷地内の断層(浦底断層)の評価がおかしいと指摘され、再調査を実施。その結果、非常に危険な活断層だったと判明したのだ。
 活断層は原子炉2基の至近距離で、新規建設なら許可は出ない。だが「活断層なし」で1号機は1966年、2号機は82年に政府が建設を許可済み。政府自身に取り消す手だてはなく、極めて異例のいわば「活断層付き原発」として存続した。
 だがその後、浦底断層から枝分かれする断層が原子炉建屋の真下に延びることが問題化。浦底断層が動いたときに地盤がずれる恐れがあるということだ。「ずれる危険のある断層の上に原子炉を置いてはいけない」との問題提起が繰り返された結果、東日本大震災後に発足した規制委が採用し13年、基準に明記した。
 原電の戦略は「原子炉の真下にある断層は動かない」と示すこと。原子炉のすぐそばに危険な活断層がある以上、100点満点を超える答案を書かなければならなかったのだが、ハードルがあまりにも高すぎた。
 福島第1はどうだったか。敷地が低く津波に弱いと1960年代の建設時から分かっていたが、高い津波は来ない前提で政府は建設を許可。その後計6基まで増えた。
 21世紀になると、高い津波の危険が研究で明らかになったが、東電は「許可済み」を盾にとってすぐに対応しようとはしなかった―。幸いなことに、敦賀原発で過酷事故は起きてはいない。原電は自らの戦略のために既に多くの時間と資金を費やしたが、まだ引き返すことはできる。活断層は今動くかもしれない。東電の二の舞いは避けるべきだ。
 法的には難しいとされるが、政府は活断層の見落としが確定した段階で1、2号機の許可を取り消すべきだった。福島第1事故で規制の仕組みは大きく変わったが、政府が大昔に出した建設の許可を取り消すことが至難であることは今も変わらない。(共同通信編集委員 鎮目宰司)