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<記者コラム>遠くのあなたにも 石井恵理菜(政経グループ)


<記者コラム>遠くのあなたにも 石井恵理菜(政経グループ)
この記事を書いた人 Avatar photo 石井 恵理菜

 先日うれしい知らせが届いた。大学時代、東京で1人暮らしをしていた頃のアパートの大家さんが、沖縄に遊びに来るという。コロナの時期も重なったことで、会うのは卒業以来の5年ぶりだ。

 東京郊外にあったそのアパートは、1階に大家さんが営む理髪店があった。当時70代半ばの大家のおじさんは、足は悪いがつえをついてどこまでも行く、力強い声の持ち主。ガラス張りの店内から、時に鋭いまなざしで、時に柔らかい表情で、街を見守っていた。

 雪景色となったある冬の朝、大家さんは私にかまくらをこしらえた。沖縄出身の私を喜ばせようと思ったのだろう。「写真撮ってやっから中入りな」。都道沿いで、通勤通学で人が行き交う中、私は腰ほどの背丈のかまくらに体をねじ込み、カメラを向ける大家さんにピースサインを送った。

 大家さんは沖縄が好きで、沖縄戦や、沖縄が抱える問題にも思いを寄せていた。今も続く、過重な基地負担などの不条理に、一緒になって首をかしげてくれたのを覚えている。

 大家さん、時がたつのは早いもので、私も記者になり5年がたちました。その間、沖縄では首里城が燃え、空(主に米軍機)からはいろいろなものが落ちてきました。沖縄の人のために、と思って始めたこの仕事。遠くに住んでいるあなたにも届いたらいいな。今ではそんな気持ちで、日々沖縄のことを取材しています。