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【深掘り】安全より演習優先 警告後も飛行継続 進路変更で防げた可能性 屋久島沖オスプレイ墜落事故報告書  


【深掘り】安全より演習優先 警告後も飛行継続 進路変更で防げた可能性 屋久島沖オスプレイ墜落事故報告書   米軍横田基地所属の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイ=米軍嘉手納基地上空(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米空軍は2日、昨年11月に鹿児島県の屋久島沖で横田基地所属のCV22オスプレイが墜落し、搭乗していた8人全員が死亡した事故について、調査報告書を公表した。「ギアボックス」(変速機)内のギアが破断したことが判明したが、破断の原因は明らかになっていない。操縦士が警告灯の表示後も飛行を続けたことなど、安全意識の低さも浮き彫りとなった。

 米空軍が公開した事故調査報告書からは、再三にわたり左側のプロップローター・ギアボックス(PRGB)内で金属片が発生しているという警告が表示されていたことが明らかになった。それにもかかわらず、操縦士は着陸せずに演習継続を優先、安全を軽視する姿勢が浮かび上がる。ギアが破損した根本的な原因は明らかにされておらず、機体の安全性にはなおも懸念が残ると指摘する声もある。

【警告】
 報告書によると、山口県の岩国基地を離陸してから約40分後、宮崎空港の近くを飛行中に、左側のPRGB内で金属片が発生し、電気的に燃焼したことを告げる警告灯が表示された。23秒後に2回目、さらに12分後には3回目の警告灯が表示された。

 当時のオスプレイのマニュアルには、この警告灯が3回表示された場合には「実施できる範囲で速やかに着陸する」とされていたが、飛行を続けるかどうかの決定権は指揮権のある操縦士が持っていて、操縦士は任務の継続を選択した。

 その後も2回警告灯が表示されたが、操縦士は飛行コースを変更せず、事態が大きく動いたのは離陸から約70分後、鹿児島県南さつま市の上ノ島南方約20キロに差し掛かった時だった。PRGB内で発生した金属片が燃焼しきれなかったことを示す別の警告灯が表示された。この場合、最も近くで着陸できる場所に「可能な限り速やかに」着陸することが定められていたが、操縦士は5分の距離にある黒島のヘリパッドや9分の距離にある硫黄島の滑走路、口之永良部島のヘリパッドへの着陸ではなく、15分の距離にある屋久島空港を選んだ。

 最終的に屋久島空港への着陸直前に左側のPRGBが故障し、墜落した。マニュアル通り、3回目の警告灯が表示されてからすぐに進路を変更していれば、墜落を防げた可能性は十分ある。

【破損原因】
 防衛省によると、ギアが摩耗すること自体は、頻繁にではないが一定の頻度で発生するという。実際に、陸自のオスプレイも昨年8月、警告灯が表示されたことを受けて静岡県の静浜基地に予防着陸した。一方でギアの破断による事故は、約数十万時間のオスプレイ飛行時間の中で他には1件も起きていないとして、警告灯の表示に従って対応していれば事故を予防できたとして「(操縦士の)危機意識が欠如していた」と指摘した。

 防衛省関係者によると、ギアボックスは機体の要で、不具合の兆候があれば慎重に対応することは操縦士ならば当然把握している基本事項だという。この関係者は「基本的なことでも言い続けなければ守らない人が出てくるのは、どこも同じだ」とため息をついた。

 一方で県の関係者は、根本的なギアの破断原因が判明していないことを重くみる。

 「操縦士の判断ミスや危機管理の不足を強調しているが、肝心な破損は原因が分からないままだ。安全という言葉をうのみにはできない」と疑念を口にした。 

(沖田有吾、明真南斗)