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米軍防止策に疑問 原因究明なく“対症療法” 県内での運用、不適格 屋久島沖オスプレイ墜落事故報告書


米軍防止策に疑問 原因究明なく“対症療法” 県内での運用、不適格 屋久島沖オスプレイ墜落事故報告書 CV22オスプレイ(共同通信)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米空軍の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの墜落に関する事故調査報告書は、ギアボックスの不具合や操縦士の意思決定に問題があったと分析したものの、不具合が発生した根本的な原因を特定するには至らなかった。破断したギアの損傷が激しかったためだ。米軍は安全対策として不具合の可能性を知らせる警告灯表示などに素早く対応することなどを打ち出した。だが、根本的な原因が判明しておらず“対症療法”でしかない。

 海兵隊や海軍、自衛隊のオスプレイも基本構造は共通している。同じ現象が起こり得ることは否定できない。防衛省はギアの破断を「まれな現象」と強調するが、一度でも起これば大事故につながりかねない。根本原因を突き止めて問題を取り除くことができない以上、住民の生活圏と米軍施設が近接している県内、特に住宅密集地に囲まれた普天間飛行場で運用するには不適格だ。

 米軍は報告書で、操縦士の意思決定も事故を招いたと指摘した。防衛省は「演習に気を取られていた様子が読み取れる」と説明している。作業が複雑になるほど判断や操作の誤りが生じる可能性が高まることを意味する。2016年に名護市安部の沿岸部で海兵隊のMV22オスプレイが墜落したのも、難易度が高いとされる夜間の空中給油訓練中だった。日米両政府は訓練を拡大させる方針を掲げており、県内で事故の危険性がさらに増す恐れがある。

 米軍は、維持整備の頻度を増やすことで不具合の予兆を早く見つけることも安全対策の一つに挙げている。ただ、防衛省によると、米軍の報告書には、飛行前からギアに金属片が多く生じていたことを示す記載はなく、飛行中に何らかの原因でひびが入ったとみられる。維持整備や点検の強化は一般論として安全性を高めるが、今回のような事例に直接対応したものではない。

(明真南斗)

【用語】プロップローター・ギアボックス(PRGB)
 オスプレイのエンジンを収容している両翼端の円筒部分「ナセル」内にあり、エンジンの動力をローターに伝えるためのギアが入る部分。各ナセルに一つずつ付いている。内部では、ギアが高速に回転するため、さまざまな部品が摩耗し、金属片が発生。発生した金属片を燃焼した際には、「CHIP BURN advisory」と呼ばれる警告灯が点灯する仕組みで、警告灯が3回点灯した場合は「実施できる範囲で速やかに着陸する」とされていた。