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M8~9、30年以内70%超 甚大な被害 備え呼びかけ


M8~9、30年以内70%超 甚大な被害 備え呼びかけ 日向灘に面した宮崎市の市街地=9日午前9時(共同通信社ヘリから)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府の地震調査委員会が巨大地震の規模や切迫度を予測した「長期評価」では、駿河湾から日向灘沖にかけての南海トラフで、マグニチュード(M)8~9の地震が30年以内に起こる確率を70~80%としている。関東から沖縄の広範囲を強い揺れや津波が襲い、甚大な被害をもたらす。8日の日向灘の地震を受け、気象庁は「巨大地震注意」の南海トラフ地震臨時情報を、2019年の現行制度開始後初めて発表。今月15日までの1週間、地震への備えを再確認し、発生時にすぐに避難できる準備を呼びかけた。

 ひずみ

 8日午後4時43分ごろ、日向灘の深さ約30キロでM7・1の地震が発生。南海トラフの想定震源域内の西端に位置し、気象庁関係者らは一気に警戒を強めた。約40分後、巨大地震との関連を検討するため平田直検討会長(東京大名誉教授)が同庁に駆けつけた。気象庁は、地震がプレート境界で発生したことなどを確認し、注意の臨時情報を発表。平田氏は直後の会見で「南海トラフでは通常時もM8~9の地震が起きる確率は極めて高いが、さらに数倍可能性が高くなった」と説明した。

 この海域には、溝状の地形「トラフ」が延びている。海側のフィリピン海プレートが陸のプレートに沈み込んでいる場所で、プレートの境界にひずみが蓄積。引きずられた陸のプレートが元に戻ろうと跳ね上がる際、地震と津波を起こす。
 これが南海トラフ巨大地震だ。100~150年ほどの間隔で発生し、国が12年に公表した被害想定では、最大震度7、最大津波高34メートル、最大32万3千人が死亡する。

南海トラフ巨大地震とは

 臨時情報

 南海トラフの震源域全体が一度に活動する「全割れ」の他、震源域の東西どちらかで「半割れ」の大きな地震が起き、遅れて反対側でも発生するケースが想定される。また今回のように震源域の一部が活動した場合は「一部割れ」と呼ばれる。

 1707年の宝永地震は全割れの巨大地震として知られる。1854年には、東側で安政東海地震が起き、約32時間後、西側で安政南海地震が続いた。1944年の昭和東南海地震は東側で、2年後に西側で昭和南海地震が発生した。
 半割れや一部割れによる一定の規模以上の地震や、異常な「ゆっくり滑り」が発生した場合、国は臨時情報で沿岸自治体や住民らに対応を呼びかける。地震の規模に応じ警戒と注意があり、警戒の場合は、高齢者らの事前避難も求められる。

 収束

 今回、注意の臨時情報によって、新幹線の減速運行、海水浴場の閉鎖などの動きが出た。ただ歴史上確認されているのは、東側の半割れが先行した事例がほとんど。そもそも日向灘は地震が頻発する領域で、南海トラフ地震とは直接関係なく約20年に1回、M7級が発生している。

 石川有三・静岡大客員教授(地震学)は「日向灘から活動が東側へ進んでいくとは考えにくい」と話す。一方「可能性はゼロでない。国も注意情報を出さざるを得ない」と対応の難しさを語る。

 「地震活動が過去の経験通りに収束するかどうかが一つのポイントだろう」と指摘するのは小原一成・東京大教授(地震学)。気象庁は、日向灘周辺の地震の分布が南海トラフの震源域側に広がらないかどうか、ひずみに変化がないかどうかなどを注視している。

 注意の臨時情報の受け止めを巡り、小原氏は「外出先で地震が起きたらどう行動するか、考えておくとよい」と話した。