防衛省は8月末にまとめる2025年度予算概算要求に、初めて8兆円台に乗る過去最大の防衛費を計上する方針を固めた。島しょ防衛を強化するため、侵攻してきた敵を排除する攻撃型無人機(ドローン)の取得費を計上し、自衛隊に本格導入する方向で調整している。複数の関係者が16日、明らかにした。
政府は防衛力の抜本的強化に向け、23~27年度の5年間の防衛費を計約43兆円とする方針。25年度の8兆円台はこれに沿う要求で、22年度当初の約5兆4千億円から23年度に約6兆8千億円、24年度には7兆9千億円超となったのに続く急速な増額となる。
ただ、23年度に多額の使い残しが判明した上、財源の一部を賄う増税は開始時期の決定を先送りしている。増額の妥当性は議論を呼びそうだ。
無人機を巡り、政府は防衛力強化の7本柱の一つ「無人アセット防衛能力」として活用を推進。戦闘による人的被害を低減できるため、現代戦の様相を一変させる「ゲームチェンジャー」と位置付け、海や陸上用の配備も目指している。
自衛隊は現在、米国製の無人偵察機グローバルホークなどを保有している。攻撃型は目標に突っ込み自爆させるタイプや、妨害電波を発する機体の運用実証を続けてきた。中国は偵察・攻撃型を含め日本周辺で活動を活発化させており、対応の遅れが指摘されている。
概算要求では、他国のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)に使う長射程ミサイルの取得費や、弾薬の備蓄など戦闘継続能力の拡充、自衛官の確保に向けた処遇向上なども重点化される見通しだ。
<用語> 防衛費 自衛隊の人件費や装備品の購入費など防衛に関する国の経費。在日米軍の再編関連経費も含む。近年は5兆円台だったが、岸田内閣は2022年12月、23~27年度の5年間に計約43兆円を投じ防衛力を抜本的に強化する方針を決定。23年度は22年度当初から26%増の6兆8219億円、24年度は7兆9496億円と大幅に増額された。27年度には防衛関連の研究開発と公共インフラ整備、サイバー、国際協力の4経費と合わせ、国内総生産(GDP)比2%とする目標も掲げる。