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【深掘り】「辺野古完成後も返還されないのでは」普天間飛行場に192億円補修費 13~23年度 6施設で計画も


【深掘り】「辺野古完成後も返還されないのでは」普天間飛行場に192億円補修費 13~23年度 6施設で計画も 普天間飛行場(資料写真)
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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、防衛省が大浦湾側で設計変更に基づく本体工事に着手して27日で1週間。防衛省は普天間飛行場の早期返還が目的だと説明する。その一方、返還時期は明示せず、飛行場維持に向けた補修工事に膨大な費用を投じてきた。2013~23年度までに防衛省が普天間飛行場の補修工事として契約した金額は約192億円に上る。

 防衛省によると、管制塔と消防署の発電設備や雨水排水施設、駐車場、隊舎、倉庫など12施設は補修を終えた。別の隊舎や倉庫、教育施設、格納庫など6施設が工事中。88億円が支出済み。今後さらに6施設の補修工事も計画している。有機フッ素化合物(PFAS)対策の名目で、格納庫の大扉を改修する例もある。雨水の流入を防ぐとして約1 億7600万円を投じて工事を続けている。

 辺野古移設を進める防衛省は埋め立てなどの工事に9年3カ月、飛行場として米軍が使える状態になるまでに約12年かかると説明する。大浦湾側で資材置き場の造成を始めた今年1月を起点と定めたにもかかわらず、返還時期は明示できていないのが実態だ。さらに埋め立て工事の難度を踏まえると、政府計画より長期化する可能性もある。

埋め立て予定地の海域で、金属くいを打ち込むクレーン船=21日午後3時12分ごろ、名護市の大浦湾(喜瀨守昭撮影)

 木原稔防衛相は返還時期について「(代替施設)完成後の部隊移転などのプロセスを考慮する必要がある」などと説明しており、部隊展開など米軍側の都合に左右される可能性がある。

 普天間飛行場返還を巡っては昨年11月に在沖米軍幹部が「軍事的に言えば普天間飛行場の方がいい」と発言し、波紋を呼んだ。防衛省は継続使用の懸念を払拭しようと火消しに走った。今年5月の日米防衛相会談では、概要を発表する際「普天間飛行場の辺野古移設及び返還」として「返還」を強調した。防衛省関係者は「返還までの間に老朽化を放置して万が一事故があってはいけないので、必要な補修工事をしている。固定化するためではない。絶対に返還するし、そのために辺野古移設を頑張っている」と強調する。

 県内では「辺野古が完成しても普天間は返還されないのでは」との疑念は元々くすぶっていた。使い続けた方が望ましいとの考えが少なくとも米軍内にはあることが示され、継続使用の懸念は収まらないままだ。県政与党の一人は、補修工事の契約額が約192億円に上ることに「返還するまでの最低限の補修だと言うが本当なのか。辺野古が完成しても使い続けるつもりにしか見えない」と指摘した。 

(明真南斗、佐野真慈)