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<記者コラム>心で理解する 佐野真慈(政経グループ政治班)


<記者コラム>心で理解する 佐野真慈(政経グループ政治班)
この記事を書いた人 Avatar photo 佐野 真慈

 ハンセン病回復者の平良仁雄(じんゆう)さんとの出会いは2017年の夏、名護市済井出の沖縄愛楽園での講話の取材だった。「らい予防法が生んだ差別、私たちの痛みと苦しみを頭ではなく心で理解してほしい」。激しい怒りをにじませて自らの人生をつまびらかにし、回復者の願いを訴える仁雄さんに圧倒されたことを覚えている。

 仁雄さんは久米島で生まれ、9歳の頃にハンセン病を発症し「らい予防法」により愛楽園に強制収容された。社会にはハンセン病へ差別と偏見が今も残る。回復者の大半が実名を明かさない中、仁雄さんは「黙っているとなかったことになる。予防法がつくった罪と苦しみを伝えなければいけない」と講話活動を続ける。

 その姿勢は記者に対しても変わらない。ことあるごとに取材に来ては無遠慮な質問をする私にも丁寧に答えてくれる。必ず「頭でなく心で理解してほしい」との言葉を添えて。

 仁雄さんは今、ハンセン病問題のシンポジウムを開こうと奔走している。85歳になる自らの年齢を考え「残された時間は短い。問題解決の道筋をつくりたい」と。私の助力など微々たるものだができることは何でもやりたい。「恐ろしい伝染病」と喧伝した過去を持つ報道機関に携わる者として。シンポは10月18日、琉球新報ホールで開催を予定する。多くの人が来場し、ハンセン病問題を「心で理解」する契機となってほしい。