沖縄防衛局は国土交通相に対し、行政不服審査法に基づく審査請求と、処分が出るまで撤回の効力を止める執行停止を申し立てた。国交相は執行停止を認める見通しで、名護市辺野古の新基地建設工事が再び動き出すことになる。撤回の効力が止められた場合、県は国地方係争処理委員会への不服申し立てと裁判所への執行停止決定の取り消し訴訟を提起する手段があるが、判断まで3カ月はかかる見込みで、工事再開をすぐに止める手だてはない。
執行停止の申し立てを受け、国交相は25日までに県から撤回理由など意見を聴取し、申し立ての是非を判断する。ただ、翁長雄志前知事が2015年に埋め立て承認を取り消した際と同じ手法で、国交相は執行停止を決めた。今回も同じ決定をする可能性が高い。
さらに国側は撤回の取り消しを確定させるため、国交相が行政不服審査法に基づく審査手続きを進めながら、対抗措置として県に代わって撤回を取り下げる代執行訴訟を高裁に提訴することが考えられる。手段としては、当初想定された撤回取り消し訴訟の提起も残されている。
対し県は撤回の執行停止の取り消しを求め、地方自治法に基づき国地方係争処理委員会へ不服を申し立てたり、行政事件訴訟法に基づく訴訟を裁判所に提起したりする見通しだ。行政訴訟は判決までに執行停止の効力を止める申し立ても可能だが、裁判所が認めるかは不透明で、工事再開を止めるには数カ月以上かかる可能性がある。
一方、国地方係争処理委員会の手続きでは県の審査申し出から90日以内に国への勧告などが行われる。しかし前回承認取り消しを巡る争いの時は県の申し出は却下された。結果に不服がある場合は高裁に訴訟を提起できるため、前回県は高裁に提訴した。今回も同じ判断が続けば、県は裁判所に解決を求めるため、新基地建設問題は再び法廷闘争へ展開する可能性が高い。