【島人の目】ワイン通のうんちく


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 世の中にはワイン通と呼ばれる人たちのワインに関するうんちくがあふれているが、ワインは自分が飲んでおいしいと感じるものだけが良いワインであり真にうまいワインである。ワイン通のうんちくはあくまでもその人の好みのワインの話であって、他人の好きなワインとは関係がない。

 ただ一般論として言えば、値の張るワインは質の良いものである可能性が高い。当たり前じゃないかと言われそうだが、ワインは複雑な流通の仕組みや金もうけの上手な輸入業者の仕掛け等で値段が高くなることもあるから単純な話ではない。
 本物の良いワインの値段が張るのは、製造に手間ひまがかかっているからである。同じ土地の同種のブドウを使っても、時間と労力と金をかけると明らかに違うワインが出来上がる。
 これはうんちく話ではなく、商業用のワインを造っている妻の実家のワイン醸造現場で僕が実際に体験しているシビアなビジネスの話である。
 たとえばうちでは今造っている赤ワインの原料のブドウをもっと厳しく選別して質を向上させたいが、そのためには多くの資金が要る。それで今のところは二の足を踏んでいる。
 ところがすぐ近くの業者は、同じ地質の畑の同じ種類のブドウを使って手間ひまをかけた赤ワインを造っていて、値段もうちのワインの5倍ほどする。そしてそのワインは客観的に見て自家のものよりも質が良い。この事実だけを見ても僕の言いたいことは分かってもらえるのではないか。
(仲宗根雅則、イタリア在住、TVディレクター)