【島人の目】ある青年の死


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 前立腺に支障を来し2カ月ほど病院通いを余儀なくされた。治療の帰り道に必ず立ち寄った公園がある。広大な敷地には緑がいっぱいで、ロサンゼルス東方に位置し、私の家から車で15分ぐらいのところにある。シャバラム・パークの名称がついている。上部には梅林があり、1月上旬から2月の下旬まで白梅、紅梅が彩りを添える。水戸市の偕楽園と姉妹公園を提携、梅も偕楽園関係者から寄贈された。

 その梅林を少し下ると100本の桜が植樹されていて、3月中旬には満開であった。南カリフォルニアに植えられている桜は沖縄のヒカンザクラと本土のソメイヨシノとを交合したような細木で早咲き。そばには小さな石碑が建てられ「桜の木をジェフリー・ロン・グー 1978~2003年 フィランソロピスト(博愛主義者)の名にちなんでここに捧(ささ)げる」と記されている。聞くところによるとジェフリー君のお父さんはドクターでその公園の隣で今も開業している。ジェフリー君は中国系米国人、2000年にハーバード大学で学んだ優秀な青年。不慮の事故に遭い25歳の若さで一生を終えた。両親と家族はどんなにか嘆き悲しんだことだろう。
 子が親より先に死ぬということほど親不孝はないといわれる。これからの人生を目前にして突然若者が現世を去って行く。その極端な例が戦争であろう。いつの時代にも戦争に駆り出されるのはほとんどが青年である。米兵の4000人余がイラク戦で死亡した。これほどの若者の死は米国にとって計り知れない損失である。今度の米大統領選は戦争を廃止して平和を探求する候補者に投票したいと私は思う。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)