【キラリ大地で】新田英之さん(28)那覇市出身


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科学者でありながらアマチュアピアニストとしても活躍する新田英之さん

 科学者でありながらアマチュア音楽家としてパリと東京で活躍するのが那覇市出身の新田英之さん(28)。那覇で生まれ育ち、幼年期の2年間を米国のボストンで過ごす。鹿児島県のラ・サール中学、同高校から東京大学工学部に進学し同大学院の研究科を修了した。

 2005年の秋から1年間、パリ市内にあるキュリー研究所に勤務していたが、いったん帰国し、この5月から再び同研究所でナノ・マイクロ科学、一分子生物学などの研究に従事することになっている。
 ナノ・マイクロ科学とは工学、物理学、生物学、化学の融合した新領域で、一分子生物学はタンパク質やDNAの挙動を1分子単位で観測、測定、解析する生物物理学の一分野。新田さんはキュリー研究所で成功した研究を基にした論文が一流科学雑誌に採択されるよう全力を尽くしたいと話す。沖縄に開学する沖縄科学技術大学院大学については、海洋科学など沖縄でこそできる学術研究へ期待したいと語っている。
 新田さんがピアノを始めたきっかけは20歳のころ、太田戸紫子先生から「ピアノの弾き方を新田君に教えたい」との誘いがあったこと。その後も鈴木美子、田崎悦子氏に師事し、研さんを重ねてきた。
 キュリー研究所での研究のために赴任したパリでは、オリヴィエ・ギャルドン、シャンタル・リュウ、ニース音楽アカデミーでパスカル・ロジェの各氏にピアノを師事している。
 06年には「不屈の民変奏曲」で知られる米国出身でベルギー在住の作曲家、フレデリック・ジェフスキ氏から、新田さんが彼に献呈した論文の返礼として「ナノ・ソナタ」が贈られている。ナノとは、とても小さいという意味が含まれ、ソナタにしては短い3ページで書かれている。
 国内外を学会などで駆け巡りながら、合間を縫ってのピアノの練習はかなりハード。「再びフランスに渡る前に、両親の故郷である名護市でコンサートを実現したい」と、26日には名護市民会館でピアノ演奏会「春のコンサート」を開いた。
 今年はフランスと日本の交流が始まって150周年の節目。その記念事業としてパリ市国立音楽院の学生らも招いて南城市で開かれた「日仏交流150周年記念コンサート」にも出演した。
 新田さんは「沖縄の人たちに、もっとクラシック音楽を聴いてもらいたい。別の仕事を持ちながらここまではできるといった提示になれば」と沖縄での演奏会について話し「沖縄独自の文化や伝統をもっと大切にしてほしい」と沖縄への思いも語った。
(与那嶺佐和子通信員)