【キラリ大地で】アメリカ/喜屋武毅さん(42)北谷町出身


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 喜屋武毅さん(42)=北谷町出身=は熊本大学で物理学の博士課程を終え、同大学が採択されていた文部科学省の事業の一つ「衝撃エネルギー科学の深化と応用」のプログラムで主に電気エネルギーを利用した放電現象を研究していた。昨年10月からは、熊本大学と国際研究協定を締結しているバージニア州にあるオールド・ドミニオン州立大学のフランク・レイディー・バイオエレクトリクス・リサーチセンターに研究員として在籍している。
 同センターには、理学系と工学系の研究者が結集し、バイオエレクトリクスの研究分野において、パルスパワーを専門とする喜屋武さんらのノウハウが医療の進歩に一役買っている。
 例えば数十キロボルト、数オームからなる電気エネルギーをナノ秒(10億分の1秒)程度の微小な時間で圧縮した時に得られる「パルス電力」が数百メガワットに至る。その大電力の「パルスパワー」によって作られる「パルス電界」を生物細胞や組織、器官へ作用させ、その生体に与える影響や細胞レベルの生理的な反応等が研究されている。最近では、皮膚がんを移植されたラットの皮膚にパルス電界を作用させると2週間で約90%のがん細胞を収縮に導く等の研究がある。
 喜屋武さんは「パルスパワー技術は微生物の殺菌、消毒、汚濁水の改善等の環境浄化から半導体開発プロセスに至るまでのさまざまな形態で産業に応用されている」と同技術の重要性を説く。
 自身の研究テーマについて「一つにはコンパクトなパルス電界発生装置(パルス電源)の設計・開発。2つに人間の血小板に対するナノ秒パルス電界の影響を検証すること。ナノ秒パルス電界を利用すると血小板を活性化させ、過敏性アレルギーのような2次的な副作用が起こらない創傷治癒プロセスが提供できる可能性がある。ナノ秒パルス電界が細胞器官膜で多数の小孔を生じ、細胞内カルシウムの増加を促すという実証があるからだ」と続ける。
 さらに「将来的には、沖縄に帰りこれまでの研究成果を生かしパルスパワー技術を地元沖縄の環境浄化や新しい医療技術の発展に貢献していきたい」と語る。熊本には、恵美夫人と汰樹君(一つ)の息子がいる。出身高校は北谷高。
(鈴木多美子通信員)