【島人の目】再び栄光を目指して


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 ボクサー、オスカー・デラホーヤ(35)は19歳でプロ入りし、16年間で36勝五敗、30KOの輝かしい戦歴を持つが現在は無冠である。5月4日ロサンゼルスのホームデポー・サッカー場に2万7000人の観客を動員、スーパー・フェザー級前チャンピオンのスティーブ・フォーブス(33勝5敗、9KO)と対戦、圧倒的優勢で判定勝ちした。

 有料ケーブルを合わせると300万人が観覧したと地元のメディアは大きく報道した。なぜこのノンタイトル戦がこれほどまでに話題になったのか。
 オスカーはEAST LA出身、1992年のバルセロナ・オリンピックで金メダルを獲得した。この地域はチカノ(メキシコ系米国人)が90%以上を占める貧困地帯で、ギャングの抗争など問題の多発するところである。
 金メダル獲得後すぐにプロに転向、連戦連勝を重ね「ゴールデン・ボーイ」と呼ばれた。瞬く間に巨富を得ると、この地を去り、モンテベローの丘に豪邸を築いた。96年まで21連勝を重ねたが最近では7勝5敗の成績、LAでの試合が7年ぶりである。以来彼に対する批判が多数寄せられた。女々しい、LAでの試合が少なすぎる、ガッツがないなどである。
 オスカーの最大目標は9月に行われる王者メイウェザーへのリベンジ・マッチだ。一生遊んで暮らせるほどの金もつくり、がんリサーチ協会への莫大(ばくだい)な献金やオスカー・デラホーヤ高校の設立への大きな貢献などで名声も得た。
 「35歳で5人の子の父親にもなって何故に苦難の選択を」と人は懸念するであろうが、私は思う。「燃えるような男のチャレンジ精神『栄光を再びわが手に』がオスカーの答えではないか」と。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)