【島人の目】暗殺の影に


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 今から40年前の1968年6月5日はロバート・ケネディ大統領候補がロサンゼルスのアンバサダーホテルで暗殺された日である。その影で人生の大半を棒に振った一人の男がいる。ロサンゼルス近郊で生まれ、カリフォルニア州立大学バークレー校卒業後、法律家としてワシントンDCで米国政府司法省に職を得たデイビッド・ステイナーである。67年は米国の若者たちが「ベトナム戦争反対」のスローガンを掲げてデモを繰り広げた時期で、その対策に彼の日々が費やされた。

 翌年の3月、民主党大統領候補ロバート・ケネディのカリフォルニア州予備選のキャンペーン・スタッフに応募し、採用され、新しい職を得た。ケネディは予備選に勝利、大統領への階段を上り詰める数カ月前に暗殺された。
 ケネディ候補にすべてを託したステイナーの人生は歯車が狂った。傷心のあまりヨーロッパに癒やしを求めたが、楽園は見つからなかった。米国に帰国してもいい職には就けず、酒におぼれ、離婚の憂き目に遭い、放浪者として人生の日々をオンボロ車の中で過ごした。
 時は流れステイナーは今65歳、再婚をし、ロサンゼルス近郊の高校で教職に就いている。傍ら「ライター」として自分の体験を基に本を出版する計画である、と6月5日のロサンゼルス・タイムスは伝えている。
 2008年6月5日は民主党のオバマ大統領候補が勝利宣言をした日である。故ロバート・ケネディ元候補とオバマ候補の政策には多くの共通点がある。この未来に大きな可能性を秘めた若き政治家を銃撃によって失うことがあってはならない。偉大なリーダーの暗殺はその国の方向性をも変えてしまうからだ。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)