移民の苦労や心を詩集に ルーツへの思い強く


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 【カンポグランデ=ブラジルで松堂秀樹】県系3世の弁護士、シモーネ勝連仲里さん(29)が祖父母や両親らから聞いた移民にまつわるエピソードなどを詩集にして出版した。

1908年から始まった日本人のブラジル移民の苦難の歴史や子孫に継承してきた心などをつづった。シモーネさんは「先祖たちの苦労のおかげで今がある。両親や祖父母、勤勉さや親切心を伝えてきた県系移民に感謝したい」と話した。
 詩集は2001年、リオデジャネイロの大学在学中にミリト編集社(リオデジャネイロ)から「ジパンコ ブラジリエンセ」というタイトルで発刊。書きためていた詩の中から42編を収め、詩人らから「繊細で誠実な言葉が美しい」などと高い評価を受けた。
 「最後のイメージ」と題した詩では「懐かしさと別れの痛み 無情な親子の別れ 船から別れの言葉 帰りの分からない苦しみがわき出る」などと、新天地に希望を抱きながら家族と生き別れる苦しさをつづった。
 「命令」では「第一に学べ そして自己を生きよ」と、言葉や文化の壁を乗り越え、法曹界や医学界など各分野に人材を輩出してきた県系人が受け継ぐ自己研鑽(けんさん)の尊さを書いた。
 シモーネさんは03年に名護市の海外移住者子弟等研修生として半年間研修。「たくさんの方々とふれあい、自分のルーツに対する思いがますます強くなった」と話す。カンポグランデ市で弁護士として働くが「自分をはぐくんでくれた県系人やブラジルの社会に貢献したい」として、将来は連邦政府の弁護士になるのが目標だ。
 全ブラジルフットサル連盟理事も務める父仲里アセリノ・カンポグランデ県人会副会長(56)と母クリスティナさん(53)は「(シモーネさんは)県系3世で、日本語や文化を学ぶ義務はなかったのに、県系移民の歴史や精神に関心を持った。詩集の出版は難しいのに、学生時代によくできた。誇りに思う」と笑顔を見せた。