【島人の目】「忠誠の誓い」


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 公立高校で初めて1時間目のクラスを持った初日、「えーわたしは、どうしたらいいの」と戸惑う場面に遭遇した。

 校内放送の合図で生徒らが一斉に起立し、右手を胸に当て、教室に掲げられた星条旗に向かって、「忠誠の誓い」を暗唱したのだ。操られたように黙々と唱えている直立不動の生徒らの姿に奇異なものを感じ、その中の「 God」(神)という単語が妙に引っかかった。
 その全意は「わたしは、アメリカ合衆国の国旗と神の下に統一された分けることができない、正義と自由をもたらす1つの国、共和国への忠誠を誓う」というものだ。この「国旗への忠誠の誓い」が政教分離を定めた憲法に違反するかで争われていたが、結局合憲になったいわく付きの宣誓は、小学生から高校生に至るまで毎朝暗唱することとして義務付けられている。
 これって戦前の日本の学校で天皇の御神影に向かって教育勅語を斉唱させられた軍国主義教育と同じ体質なのでは。その結果、天皇を神と仰ぎ、大東亜共栄圏実現のためアジア諸国を侵攻していった日本国。
 「忠誠の誓い」には、米国が神に選ばれた国であるということが含蓄されているにもかかわらず、愛国心教育の1つとして9割方の米国人に賛同されているという。この愛国心ってやらが高ずると偏狭な国粋主義に移行してしまう危険性があるというのに。現に今も米国は、ナショナリズムの一途を邁進(まいしん)しているのではないか。イラク駐留もさることながら沖縄でのメア在沖米総領事の発言、米軍の傍若無人な振る舞いなど最たるもの。その元凶は、まさに「忠誠の誓い」にありと思ったりする。
(鈴木多美子、ワシントンDC通信員)