【島人の目】治療費は前金で!


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 風邪をこじらせたり、救急や治療などでどうしても欠かせないのが「病院」である。普段、生活の中では取りたてて気にもかけないのであるが海外で生活していると最大の関心事である。沖縄留学生には、会うたびに「ある程度の現金を肌身離さず持つように! 万が一の備えとして」と、中国での医療費の話を口癖のように繰り返すのが常となった。

 受診申請、診察・検査、治療、あるいは入院など一連の手続きがあるが、料金はすべてが「前納制度」となっており、受診申し込みの段階で「診療カード」で入金することになっている。いかなる診療過程でも、その都度診療カード(入金カード)で事前に残高がチェックされることとなっており、患者は自らの治療費等の額をあらかじめ入金し診察や検査を受けるのである。つまるところは、いわゆる負担し得る限度内での治療となるわけである。
 そのためか、診察の段階で、患者・家族と医者との間で交わされる言葉の中に「投薬の値段や治療費問題」が必ずと言ってよいほど出てくるのである。極端に言えば、治療薬にも高価なものとそうでないものがあり、また、治療途中での一時退院をはじめ通院へと切り替えるのも珍しくないようだ。中国の友人によれば「これも結局は治療費が工面できず、どうにもならないから」という。「でも病院すら行けない人も多いですからね」との一言に、13億国民を抱える中国なのだと自身に言い聞かせるのだが、何か一抹の寂しさが込み上げてくるのである。
(仲宗根信明、県産業振興公社福州事務所長)