【島人の目】在米外国人


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 夫がまだ大学院生だったころ、(何と今人気の演歌歌手ジェロと同じ大学。ミーハーですみません)わが小さな安アパートには、週末となると各国からの留学生が集まって来てパーティーが始まり、比較文化論に花を咲かせていた。日本人留学生は、自国の島国根性、がんじがらめの教育システム、官僚政治等をよく自嘲(じちょう)気味に批判したものだったが、台湾人や韓国人は、同胞がいると国の批判めいたことを一切言わなかった。後に「スパイがいるから自重している。何でも言いたいことが言える日本人がうらやましい」と言った台湾独立の地下運動をしていた留学生の言葉が印象に残っている。二つの国家に分断された国、民族紛争が絶えない国から来た留学生の心情は、日本人には理解し難かった。

 米国には、世界中から大勢の人が自由と夢を求めてやって来る。非合法も含む移民によって人口が40%増え、米国の総人口は、既に3億人に達しているもよう。在米外国人は、まず永住権、その後市民権を取り米国人になる。だが、日本人一家で、市民権を取った家族は、私の周りにはほとんどいない(国際結婚した沖縄系女性には市民権を取得した人たちがかなりいるが)。
 ある著名な学者は「国家には二つある。一つは歴史や言語、文化を共有した共同体としてのネーション(国)。もう一つに、行政、権力機構としてのステート(国家)。現代の多くの紛争はネーションとステートとの矛盾対立から起こる。日本は、ネーションとステートがほぼ一致し、紛争を心配する必要のない幸福な共同体」と書いている。
(鈴木多美子、ワシントンDC通信員)