【島人の目】大統領選投票が終わって


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米国の市民権を得てから今度の大統領選への投票は2度目である。4年前に私が投票した候補者は僅差(きんさ)で敗れたので、今年は必勝を願った。私が選挙に出掛けたのは午後6時を過ぎていた。前回は午後4時ごろで、近所の小学校の投票所に長い列ができ、投票までに3時間もかかったからである。投票所は午前8時から午後8時までの12時間。投票に出掛けるころには東部の開票が始まっていた。広い米国は時差があり、カリフォルニア州選出の故S・I・早川上院議員が1980年代に同時開票を提案したが実現しなかったいきさつがある。

 米国では永住権を取得し何十年居住していても市民権がなければ投票できない。投票日は大統領選のほか、連邦下院議員、市長、市議などの選出、10項目以上のプロポジション(提案)による住民投票も含まれていた。
 オバマ氏の勝利は「アメリカの勝利だ」と思った。それにしてもオバマ氏は打たれ強い、人種のカラーを飛び越えた政策、多くの困難を克服した道程が功を奏した。最後の懸案「ブラッドレー効果」も払拭(ふっしょく)した。82年のカリフォルニア州知事選で世論調査で大きくリードしていたアフリカ系のブラッドレー元ロサンゼルス市長が白人候補に敗れたことに由来する。
 ブッシュ政権の8年間で立ち込めていた暗雲が晴れわたり、陽光がさしたような快感に私は浸った。テレビに映し出されたジェシー・ジャクソン元大統領候補の涙、人種の違う若者が抱き合って勝利を満喫している映像がそれを物語っていた。辛うじて「草の根民主主義」に支えられてきた米国の信頼感は新しい大統領の下、大きな波となって世界に浸透していくのではないか。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)