【島人の目】ヨーロッパ保守層の本音


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 イタリアのベルルスコーニ首相は米次期大統領のオバマ氏を「若くてハンサムで日焼けしている」と評して、国内野党の左派から激しい批判を受けた。彼はもともと失言の多い脇の甘い政治家である。その事実に加えて、世界の主要国の中ではマイナーな国イタリアのトップの言葉にすぎない、という事情もあってか彼の暴言の影響は国際的には最小限にとどまっているようだ。
 しかし、明らかに人種差別意識を秘めたイタリアの宰相の発言は、実は彼が属する強大なヨーロッパ保守層の、黒人米大統領誕生に対する不安や焦りを象徴的に表しているようにも見える。ヨーロッパの保守派は米国に黒人大統領が生まれたことを内心では決して喜んでいない。それでは西欧を二分するもう一つの巨大勢力である左派はどうかというと、政治家や知識人や文化人等の上層部はともかく、一般庶民はかなり戸惑っているというのが実情である。
 ヨーロッパにはアフリカやアジアからの移民が急速に増えている。庶民にとっては貧しい労働者や不法滞在者等とほとんど同義語のそれら移民と同じ人種のオバマ氏が、超大国アメリカの大統領になる事態がよく理解できずに戸惑っているのである。つまりヨーロッパは基本的にまだ黒人米大統領を受け入れる心の準備はできていない。そのことを象徴的に現しているのがベルルスコーニ発言に対するヨーロッパ各国の関心の低さであるように思える。
 (仲宗根雅則・イタリア在住、TVディレクター)