【島人の目】不自然体


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 衛星放送で日本のプロサッカーの試合を見ていたら、得点を入れた選手が疾走しながら欧米人並みに拳にキスをするしぐさをした。

 僕はその時、安倍元総理が外遊先の飛行場で妻と手をつないでタラップを下りる姿を見た場合と同じくらい気恥ずかしい思いをした。どちらも普段やらないことをパフォーマンスでやっているところが見苦しい。
 拳にキスをしたJリーガーの男は、欧米の選手は結婚指輪に口づけをして妻に感謝を捧(ささ)げているということを知っているのだろうか?
 意味は分からないが、選手の動きがカッコいい、という理由だけであのしぐさを真似(まね)ているように見える。たとえ意味を理解して指輪にキスをしていたとしても、僕はやっぱりあのアクションは見るに堪えないものに感じる。なぜなら、それは日本人の自然な動きではないからだ。
 妻への感謝を表すときに結婚指輪に接吻(せっぷん)をするなんて、いったいどこの日本人だと思ってしまうのだ。
 元首相の安倍さんが、奥さんと手をつないで飛行機を降りたのは、ブッシュ大統領や英国のブレア前首相あたりを真似ていたのだろうが、彼は普段から欧米人のように公衆の面前で奥さんを抱きしめ、手をつないで街を歩き、ほっぺたにチュー、としたりするのだろうか?
 そうした欧米の慣習があって、はじめて拳へのキスや大舞台での夫婦の手つなぎが自然になる。今のところ日本人はそうしないことが自然で美しいと僕は思うが、どうだろうか。
(仲宗根雅則、イタリア在住、TVディレクター)