【島人の目】WBCってなに?


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 WBCで日本が連覇を果たしたのはうれしい限りである。それとは矛盾するようだが、実は僕は野球の国際大会を「世界~」と呼ぶことに釈然としない気持ちも抱いている。自国内の野球を「ワールドシリーズ」と名付ける米国みたいで僭越(せんえつ)だ。

日本が優勝して「日本、世界の頂点に立つ!」とか「侍ジャパン世界を制す!」などとマスコミが騒ぎ立てるのもナンセンスである。なぜなら、野球は少しも世界的なスポーツではないからだ。
 世界の大部分が無関心なスポーツを、世界中が興奮しているかのように報道するのは変だ。ローカルな競技を日本国民、特に子どもたちが全世界的な大会と思い込んで、世界制覇などと勘違いしては困る。野球がオリンピックの公式競技から外されたのも、ひとえにそれが世界ではマイナーなスポーツだからである。そういう現実を子どもたちにはきちんと理解させるべきだ。
 大会にはイタリアも参加しているが、イタリア国民は誰もそのことを知らないし関心もない。従ってマスコミの報道も一切ない。参加国でさえそんなありさまだから、ほかの欧州諸国や世界の国々は推して知るべしである。
 僕は野球は嫌いではない。また、沖縄にはプロ球団が大挙してキャンプにやってくるから、野球には頑張ってほしいとも思う。が、おかしなものはおかしい。子どもたちに間違った認識を植え付けないようにせめて「世界」という語を廃して、例えば「侍ジャパン、野球一!」みたいな言い方で報道してほしいものである。(仲宗根雅則、TVディレクター)