【島人の目】旅立ちのうた


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 3月は卒業シーズン。いまアンジェラ・アキの「手紙~拝啓15の君へ~」がヒットしている。旅立ち、癒やし、励ましがこの歌の主題であろう。コンテンポラリー(現代的)な速いリズムで、「荒れた青春の海は厳しいけれど、明日の岸辺へと夢の舟よ進め」とアンジェラが歌うと、多くの若人は感動が頂点に達し、涙にむせぶ。若者よ夢を持ち続けて前進しようではないかと、誘いかけているのだ。

 癒やしといえば、フォーク歌手の関島秀樹にロサンゼルスの隣接都市モンテベローのゴルフコースで会った。滋賀県人会の「新年親睦(しんぼく)会」にゲスト出演を依頼されているので、ロサンゼルスまで来ているとのことだった。関島は熊本県出身だが、琵琶湖が大好きで大津市に住居を構えている。アメリカ2世の妻ジョーリーンと2人の娘はモンテベローに住んでいるので、1、2月の公演ツアーの暇な時期にLAを訪れる。
 4年ぶりに会った彼は幸せそうに見えた。2008年7月4日、東京「銀座王子ホール」で開催したリサイタル「コンクリートの街で」のDVDをわたしにプレゼントした。その中には島津亜矢のヒット曲で、関島作詞・作曲の「帰らんちゃよか」も入っている。
 沖縄との縁も深く、ほとんど毎年多忙な公演スケジュールの中に組み入れ、特に私の生地・本部町や、隣接した今帰仁村に知人が多いと話した。長編音楽ドキュメンタリー映画「荒木栄の歌が聞こえる」では、大工哲弘、ミヤギマモル、かりゆしバンドと共演した。
 1960年代に若者の間で歌われたのは「肩を並べて落ち葉踏む、母校の庭は城の跡」ではじまる「丘の上の白い校舎」。別れの切なさと、人知れず心の安らぎに自分を見詰め、再出発していった若者が多くいたことが思い出される。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)