【アメリカ】岸本夫妻、母校琉大に桜160本 「美しい景観」に思いはせ


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 名護市出身でロサンゼルス近郊パロスバーデス在住の実業家岸本正之・多摩子(東京出身)夫妻は2008年、正之さんの母校・琉球大学キャンパス内に160本のカンヒザクラを寄贈・植樹した。これは第1次計画で、09年の第2次計画で200本、さらに第2次計画に向け植樹位置の調査が進んでいるという。

 岸本さんは1957年に琉大を卒業、その後48年間、米国で暮らした。1昨年に同大を訪れた時、学窓時代の思い出が詰まった首里城跡の元キャンパスは今ではアーカイブ(公記録)だけに残り、一抹の寂しさを覚えた。在学時に赤木の巨木を見ながら歩いた石畳の通学路は跡形もなく消え、「学びやは風雪とともに去った」と感慨深い念にかられたという。
 しかし、西原町千原に移設された新キャンパスを見た時、第2の母校として自然の美しい景観に包まれた学びやを想像し、岩政輝男学長と宮城武久同大学同窓会事務局長にカンヒザクラの寄贈を申し出て了承された。
 いま、琉大では亜熱帯気候の自然環境に適する校内造園が進められている。しかし、同じような気候や地理的条件を持つ南カリフォルニア、ハワイ諸島や台湾にある大学キャンパス等に比べると、造園色彩が豊かでないと、岸本さんはみる。色鮮やかな冠花樹の植樹がキャンパス・メーキャップになると考えた。
 岸本夫妻は過去10年間にわたり、自然保護と植樹運動にかかわってきた。昨年アフリカのマラウイで植樹プロジェクトに参加、10万本の植樹を支援した。遠からず50万本に増えるだろうと期待している。
 岸本夫妻の奉仕精神はとどまるところを知らない。07年5月には夫婦で「岸本基金」を設立し、米国国税庁から免税権も与えられた。05年に名護高校生8―10人を対象としたアメリカ短期留学制度を実施してからことしで5年目。米国在住の沖縄系人として常に母県を思い、支援の手を差し伸べる思慮深い人だ。
 岸本夫妻の善意に対し、岩政学長は「桜の植樹は大学が取り組むエコアクションの助けになる。将来、桜が大きく育ち、地域の皆さんにも親しんでもらえるようにしたい」と語った。
(当銘貞夫通信員)

岸本正之さん(右端)、多摩子さん(右から3人目)夫妻と琉大同窓会役員ら=西原町、琉球大
岸本夫妻が寄贈した桜の若木=西原町、琉球大