【ボリビア】1世の苦難胸に迫る 演劇「コロニアオキナワ物語」


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主人公とその夫が娘かず子を移住地で亡くす場面=ボリビア国オキナワ移住地、オキナワ日ボ協会文化ホール

 ボリビア国オキナワ移住地のオキナワ日ボ協会文化ホールで劇「コロニアオキナワ物語」がこのほど上演された。この劇は、沖縄県派遣教師の比嘉悟教諭がオキナワ移住地に赴任し、1世の方々からたくさんの苦労話を聞いたのをきっかけに、青年や子どもたちに語り継がなければならないとの思いに動かされ、この劇を制作した。

 劇は、最初の子どもを沖縄戦で、2人目の子どもをボリビアでの最初の移住先「うるま移住地」で亡くした女性に焦点を当て、孫を含めた5人の子どもたちが、キジムナーの引き起こすつむじ風によってタイムスリップしながら、その生涯をたどっていくストーリー。1月16日に「コロニアオキナワ実行委員会」(比嘉徹実行委員長)が組織された。子どもたちの役25人は公募で決め、2月から舞台練習が開始された。舞台背景は、オキナワ日ボ校美術クラブの生徒や、地域の婦人たちによって描かれた。
 当日は250人の観客が集まった。三線愛好会の演奏に合わせ、ママさんコーラス隊が歌う「村の心」(作詞作曲・平哲男教諭)で幕開け。女性が2人の子どもを亡くす場面では、多くの観客が涙をぬぐい、コミカルなキジムナーの演技では笑いを誘った。
 さらに、移住者がボリビア人とのかかわりで、スペイン語ができず苦労したことを、青年たちがユーモア交じりで演じたシーンでは大きな笑いが起こった。フィナーレは琉球國祭り太鼓で大いに盛り上がった。
 劇の後、ある1世の女性は「わたしも子どもを亡くした。」と涙を流していた。比嘉悟教諭は、移住地全体の協力を得てこの劇を上演することができ「本当に良かった」と語った。
(木内一夫通信員)