【島人の目】ゴールデンボーイ表舞台去る


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 ボクシング界のプリンス、オスカー・デラホーヤが現役に別れを告げた。映画俳優ばりの甘い顔立ちと洗練されたスピード感あふれるボクシング・スタイルは、多くの女性ファンをもブラウン管にくぎ付けにした。彼の妻ミリーはプエルトリコ出身の元女優で、オスカーに初めて会ったときにはボクシングに一切興味がなかったが、多くの女性ファン同様、数々の名勝負に魅せられ、ボクシングにはまっていったいきさつがある。

 オスカーはロサンゼルスの貧困地帯イーストLAで生まれ、1991年のバルセロナ・オリンピックで見事金メダルを獲得「ゴールデン・ボーイ」と呼ばれるようになった。その年はアメリカ・ボクシング界不作の年で、彼一人が金に輝いた。92年プロデビュー以来、戦績は39勝6敗。その間6階級制覇、10個のタイトル取得の偉業を成し遂げた。連戦連勝は31試合の前人未踏のレコードにまで輝き、ペイパービューとHBOで稼いだ金額は700億円ともいわれる。
 時とともに人間も老いる。オスカーも36歳、人生としてはこれからで「ゴールデン・ボーイ」という名の会社を設立、後輩の育成に励んでいるが、第一線でリングを降りることにこだわりを見せた。
 「引退は時として考慮に入れたことだが、実際に宣言することはとてもつらい」とメディアとのインタビューで、出来たてのブロンズ像を前に惜別のつらさに耐えるように涙をぬぐいながら答えた。17年間の華やかなる在りし日の栄華がまぶたに浮かんできたのであろう。
 モハメッド・アリーをはじめクォリー兄弟ら多くのボクサーが頭部へのダメージがあり得ることなどを考えると、オスカーよそれでよかったのだ! と励ましてやりたい。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)