【島人の目】5千万人の俳優たち


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 イタリアのテレビ番組は、トークショーとバラエティーと映画であふれている。というか、ニュースとスポーツ中継を除けば、その3種類の番組ばかりといっても過言ではない。
 トークショーのテーマは、食や休暇や恋愛などの軽いものから、政治や経済や犯罪などの重いテーマまで多岐にわたる。バラエティーは歌あり踊りありクイズありの、文字通りのバラエティーショー。映画はイタリア映画とハリウッド物がほとんどである。

 イタリア国民はスペクタクル、いわゆる壮大な見世物や劇的なショーが大好きだ。人生も劇場劇だと思っている節があって、言動が派手で感情の起伏が激しい国民性をもじって「5千万人の俳優たち」と呼ばれたりもするのは周知の事実である。
 にぎやかな国民が生み出した新聞には「芸能」欄が幅を利かせている。世界の10大新聞選考リストにもほぼ必ず顔を出すイタリアきっての高級紙「コリエーレ・デッラ・セーラ」にさえ、映画、劇場、テレビなどについて連日最低でも2~3ページの記事が載り、これに加えて毎日のテレビ番組欄が別枠で必ず2ページ掲載される。
 テレビで放映される映画の数も半端じゃない。夏の週末にもなると、全国ネットの7局で一日30本近い映画が放映される日も多い。番組制作を避けている局の怠慢、と斬(き)って捨てることもできるが、高い放映権料を支払ってあえて既製の映画を放映しまくるのは、それだけ映画やスペクタクル好きの視聴者が多いという一言に尽きるのである。
(仲宗根雅則、TVディレクター)