【島人の目】「刻まれた名前」を読んで


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 県平和祈念資料館の2009年度第19回「児童・生徒の平和メッセージ展」詩部門・中学生の部で最優秀賞に選ばれた又吉まことさん(仲西中2年)の詩「刻まれた名前」を読んだ。まことさんの詩は、曾祖母の嘉数タマさんが平和の礎に詣で、戦死した夫の霊に60余年ぶりに会えた心境がつづられている。

 優しい思いやりのある力強い作品になっていて「希望を託された者として 平和を守る者として」戦死した曾祖父とバトン・リレーで、平和のメッセンジャーになることを礎の前で誓った。
 まことさんの詩は戦死した夫のことを思いつつたくましく生きてきたタマさんへの感謝や、平和の礎を作った人々への感謝に満ちあふれている。決して悲観せず、前向きに物事をとらえていくのだとの決意であり、非戦を念願、平和へのメッセージを伝えていきたいとの意気込みが感じ取れる作品だ。
 まことさんが緑深い山原と称した新里は、わたしの生まれ故郷であり、わたしは18歳にそこを後にして50年がたつ。
 2歳の時、わたしは避難壕の中で大やけどを負った。戦中のことで、両親兄姉は筆舌に尽くし難い思いをしたようだ。ようやく生き延びたが、その後30年もの間、わたしは後遺症に悩み続けた。トラウマに取りつかれ、恐怖におびえて寝られない夜が続いた。物事に集中できず、友人を拒み続け、荒れた青春の日々であったことが思い浮かぶ。戦争被害者としての自分の境遇を恨んだ。
 しかし、40代に入ってある書物をきっかけに心を入れ替えることができた。人を恨んでいる間は人は決して幸福になどなれるものではないことを悟った。
 まことさんの詩では曽祖父の戦死を「家族を守るため」ととらえているが、平和で幸せな人生を望むならば、「許す心」とポジティブ(前向き)な態度で生きていくことが大事ではないだろうか、とあらためてその詩の心と自分の人生観との共通性とを見いだした思いにかられた。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)