【島人の目】部屋探し in Japan


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 アメリカ的感覚しかない息子が東京に部屋を借りることになり「礼金とは何ぞや」と首をひねる。敷金は、「deposit」で理解できる。「礼金」は、辞書で引くと「reward」とあり、謝礼金となりいわゆる日本の慣習だと説明すると、「なぜ大家さんにお礼をするのか意味が分からぬ」と不服そう。確かに、米国には、礼金は存在しない。

礼金2、敷金2に仲介料がプラスされると、「えー? うそ!」と奇声が出るほどの高額に。なるべく礼金0敷金1か、せめて1、1のをリストの中から探す。日本でアパマンを借りることがどんなに経済的に大変なことか身をもって感じた。
 外国人にとっては予期しない大きな出費となり、日本の住みにくさを実感するわけだ。派遣切りに遭い社宅を追い出された労働者が簡単に部屋を借りられない状況もうなずける。
 それにしてもこの「礼金」という代物、一体何? 歴史をひもとけば、戦後のどさくさのころ、住む所のない人たちがやっとの思いで家を借りられ、そのお礼の意味で大家に渡したことから始まったといわれる。また、家賃の滞納や夜逃げ等で費用を徴収するのに時間と労力がかかり、泣き寝入りすることがあり、その結果、すべての借り主からも一律徴収するようになったともいわれている。
 だが、業界での決まりはないようで、その額は大家さんによる。最近は、礼金は請求に足る理由も法的な根拠もないもので、不動産業界を不透明にし、あしき慣習として批難されつつあるとのこと。外国人にとっては、不可思議な代物である礼金。グローバル化の今、外国人に住み良い日本を感じてもらうためにも、なくしてほしい慣習だと思う。
(鈴木多美子、ワシントンDC通信員)