【キラリ大地で】アメリカ/落合三郎さん(57) 三線奏で沖縄の空気に


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 ニューヨーク県人会の功労者の葬儀の席で「散山節」を独奏した落合三郎さん(57)=千葉県出身=の絃声一体の演奏は、会場を厳かな雰囲気に包んだ。
 「琉球古典音楽は、自分にとっては、今までになかった音楽。弾いていて気持ちが良い」と古典音楽の魅力を話す。

大学卒業後は、レコード会社に就職し、長年音楽関係の仕事に携わってきた落合さんならではの沖縄古典音楽の神髄に触れる熱弁に聞き入ってしまった。
 名護出身の秀子夫人の両親が渡米の土産に三線を持参したのは1980年代。そのころ、落合さんはレゲエ・プロデューサーとして、月刊記事の執筆やスタジオでの音楽制作、ミュージシャンをジャマイカから日本へ招(しょう)聘(へい)し全国コンサートツアーを行うなど多忙の日々を送っていた。「レゲエ一色だった20年間は三線に触れることもなくほこりをかぶっていた」と笑う。
 その後、インターネットで情報が得られるようになり、三線の教則本を書いている人とのメール交信や古典を習い始めた人の「お稽古(けいこ)日記」というブログを参考に練習を始め、積極的に三線の世界に入るきっかけをつくっていく。
 平和運動を目的に演奏旅行で訪米した沖縄からのグループと知り合い、その団長の宮城欣也氏に弟子入りした。三線を通した友人が増え、沖縄音楽とのつながりが広がっていった。沖縄には度々帰り、宮城氏に師事する。
 そして2006年に琉球古典音楽の新人賞、08年に優秀賞を受賞した。名護の「北部芸能祭」にも参加し地謡の醍醐味(だいごみ)を味わっている。
 現在、ニューヨーク市中心に沖縄古典音楽が好きな仲間との「カルテット」を結成。また、マンハッタンのセントラルパークで毎週火曜日に練習する若者たちの「三線シンカ」のアドバイザーとしても参加している。ブルックリン植物園の桜祭りや県人会のイベント、日本クラブ新年祝賀会等での演奏やその他コーラスグループの演奏会で客演したりと数々の演奏活動を展開。8月末にマンハッタンで開催されたストリートフェアにも「オキナワクラブ」として参加し、沖縄文化のアピールに一役買った。
 「来年は、沖縄で三線の最高賞にチャレンジしたい」と話す落合さん。ニュージャージー州の自宅で披露してくれた「十七八節」の物悲しい調べが夜のしじまに響き、一瞬、米国にいることを忘れさせた。
(鈴木多美子通信員)