【島人の目】サラダ・ボウルの国


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 「オバマ大統領の忍耐強さ」については大統領選前から気づいていたことであった。最近テレビのトーク・ショーでオバマ大統領は「私は選挙前は黒人であった」と表現して周囲を笑わせた。

 その2、3日前にオバマ大統領が行った演説の最中に「あなたはうそをついている」と大声でジョー・ウイルソン下院議員がやじを飛ばしたばかりであった。そのやじに大統領はあまり反論をしなかった。むしろカーター元大統領などが「人種差別的発言だ」と騒いだ。オバマ大統領にユーモアに満ちあふれた男の多様性を垣間見たように思った。
 セレナ・カフはロサンゼルス出身の33歳になる黒人ビジネス・ウーマンである。白人が圧倒的多数を占めるワイン界に進出して成功している。ワインの仕入れはほとんど南アフリカの黒人ワイナリーからである。アパルトヘイト(人種隔離)で追われた黒人に手を貸した。2008年には100万ドル(1億円)の売り上げ、09年の販売はさらに50%アップが見込まれている。最近のLAタイムズは「ワインの味を濃くする黒人のプライド」と題してセレナのスモール・ビジネス成功物語を掲載している。
 この物語はまさしく「アメリカを象徴するメルティング・ポット(人種のるつぼ)」だと言ったら1年間UCデイヴィスで学んだ早稲田大修士課程の学生・波照間陽さんは「現在ではサラダ・ボウル」と表現していると私に進言した。なるほど人種がそれぞれの立場を主張しながらも一つのボウル(社会)で一緒に仕事をしている、それが現在のアメリカの姿だ。アメリカほどダイバーシティー(多様性)に寛容な国はないのではないか。アジア系大統領の出現も夢ではないかもしれない。(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)