【島人の目】著書に寄せられた書評


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 昨年の大統領選で共和党の副大統領候補として脚光を浴びたサラ・ペイリン前アラスカ州知事の回顧録「Going Rogue―An American Life(ならず者でアメリカに生きる)」に接した。

 アラスカ州の大自然で育った幼少時代から、働く母としての生活、昨年の大統領選の内幕まで同氏の半生がつづられ、発売前からベストセラーにランクインしている書物である。メディアは、アメリカのあちこちで書店前に長い列を作って同氏の近著を手に入れる光景を報道した。老若男女のペイリン氏への批評も交えて報道された。これはアメリカ東海岸でのことである。
 ここ西海岸ではそのような光景は見られなかった。私の住むチノヒルズの書店ですぐに購入でき、読み始めることができた。
 近著といえば、私の著書「アメリカに生きる」がある。恐れ多くもここで私はペイリン氏の著書と私のそれを比較しようとしているわけではない。最近本紙に掲載された私の著書に対する琉球大学山里勝己教授の書評は「米社会の微妙な息づかい伝える」とのタイトルで、「69年に初めて渡米してから現在までの氏の生き方は、さめた眼で描かれた20世紀後半のアメリカン・ドリームを見るような気がする」との一節に見られるように、全体を通して感慨を覚える作品となっている。
 確かに私はエリートではない。しかし、アメリカという日本語圏外に住んで、いちずに文章作成に努力してきたことが人の心を揺さぶる一因になっているのだとしたら、うれしいことこの上ない。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)