【島人の目】日本の教育制度


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今、クラシック界でホットな話題といえば、昨年10月、ロサンゼルス・フィルハーモニックに就任した28歳の指揮者グスタヴォ・デュダメルであろう。つい最近まで彼は無名であったが、タイム誌で「2009年世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。

 LAフィルはこれまで指揮者に外国生まれを多用している。ズビン・メータはインド人、エサ=ペッカ・スローネンはフィンランド・ヘルシンキ出身である。デュダメルはベネズエラで生まれ、5年前にドイツのバンベルクで開かれた第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで優勝するまでは、ベネズエラ国外では無名の存在だった。
 ベネズエラには世界に誇る音楽教育エル・システマがあり、その中のユース・オーケストラ部門は際立っている。無料で子供たちに楽器を貸し出し、レッスンを受けさせるというシステムである。1999年に設立され、その実力は今やアメリカ、ヨーロッパを含む世界中で認められている。この10年間デュダメルが主席指揮者を務めてきた。
 デュダメルの名声は世界中のオーケストラから認められ、ウィーンフィル、ベルリンフィル、ボストンシンフォニーなどから客演の申し出が絶えない状態だ。
 フィンランドやベネズエラなどの国が世界的に有名な指揮者を排出する。日本で第二の世界の小澤征爾の誕生はいつになるのだろう。
 脳科学者の茂木健一郎は著書「感動する脳」の中で、「日本でビル・ゲイツはなぜ育たないか」の疑問に対して、その一因にやはり教育があるのではと答えている。
 日本の教育制度改革が叫ばれて久しい。音楽界のみならず、教育全般にわたって改革が必要とされているのは確かだ。(当銘貞夫ロサンゼルス通信員)