【島人の目】大城立裕氏との出会い


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 芥川賞作家大城立裕さんに初めてお会いしたのは今年の1月31日、「海の天境」アメリカ公演が終わって関係者たちとの「打ち上げパーティー」の席上であった。宴会も終わりに近くなって私は名刺代わりに私の本を大城さんに贈呈した。「今後のアメリカ研究に何らかのお役に立てればと思いまして」と差し上げた。

 2月下旬になって、私に1冊の本が航空郵便で届いた。大城立裕著「縁の風景―人生は無数の一期一会」で、「ロサンゼルスではお世話になりました。また、高著『アメリカに生きる』を賜りまして、ありがとうございます。帰路の飛行機の中で読みました。本を読むのが遅いので、半分しか読めていませんが、それぞれのエピソードを楽しみました。印象が深いのは、沖縄の若者たちが、アメリカで学業に励んでいる様子の記事が多く、それがよく書けていることです。昔なら実業での「成功」の話が多かったのでしょうが、近年では学問、文化の成果が尊重されるのを知って、うれしく思います」と丁寧な手紙が添えられていた。
 「縁の風景」は2004年から1年間、新聞の夕刊に記載されたコラム集となっている。ご本人いわく「小味な面白い話を集めた」だけあって、50年前から2007年までの一期一会、人生の機微が600字の限定された紙面にユーモア・タッチで描かれている。こわもてイメージの大城さんの面白い一面が表れている。端的に韻を込めた文章表現を学んだ。読んでいてウチナーグチの多用さに気づく。
 組踊「海の天境」の成功は原作の大城立裕さん、演出の幸喜良秀さん、振り付けの谷田嘉子玉城流扇寿会家元と出演者、英訳の山里勝己琉大教授、沖縄県人会(比嘉朝儀会長、徳永愛子芸能部長)の皆さんの努力の集大成であった、と私は思う。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)