【島人の目】イタリアみやげ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 かさばらない、腐らない、気どらない。それでいてイタリア的、というのが僕の日本へのおみやげ選択の条件である。例えばとてもイタリア的なものであるワインはかさばる。またうまいチーズや生ハムは腐りやすい。デザイン系の装飾品やファッションなどは気どる。試行錯誤を経てたどりついたのがサラミである。

 サラミはかさばらず、腐らず、気どらず、しかも大いにイタリア的である。イタリアの食の本筋である肉の旨(うま)味が凝縮されていて、そのうえ優れた保存食という重大な一面もある。ところが、サラミは都会の人々には好まれるものの、田舎ではあまり人気がない。生ハム等に比べると香りや味に特徴があって、慣れない者には食べづらい印象もある。そのせいかどうか、例えば東京辺りの友人知己には喜ばれるが、沖縄では人気がない。
 僕の故郷の宮古島や多良間島ではもっと喜ばれない。地方の人は日本でもイタリアでも新しい食べ物を受けつけない傾向がある。いわゆる田舎者の保守体質というものであろう。生まれも根っこも大いなる田舎者である僕は、白状すると、イタリアに来て丸2年間ほぼ毎日食卓に出るサラミを口にできなかった。2年後に思い切って食べてみた。以来、今ではサラミや生ハムのない食事は考えもつかない。
 僕は自分が体験した喜びを親しい人々に味わってもらおうと、いつもサラミを島に持ち帰っているのだが、歓迎されないおみやげは贈る自分も喜ばず、正直少し疲れてきたかも。
 (仲宗根雅則 イタリア在住、TVディレテクター)

<おことわり>
 イタリア土産としてサラミを挙げていますが、欧州からは現在、BSEなどの影響でお土産として肉製品はほとんど日本へ持ち帰ることはできません。詳しくは動物検疫所のHP(http://www.maff.go.jp/aqs/)、または同那覇空港出張所(電話)098(857)4468。