【島人の目】サクラ、桜、SAKURA


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 今年、幸運なことに沖縄、東京、そしてここワシントンDCの満開の桜を観賞することができた。
 沖縄では、与儀公園のヒカンザクラ。青い空とヤシの木々とのコラボレーションが南国らしい。濃いピンクの花がうつむき加減に咲くさまは、古き良き時代の沖縄女性の可憐(かれん)さそのものに思える。

 東京のソメイヨシノは、薄いピンクで、花弁が風に舞ってはらはら落ちるさまには風情があり、「もののあわれ」を感じたり。寺や神社でひっそりと咲く桜は、華やかさの中に気品があり、昔の日本女性のような奥ゆかしさが漂う。隅田川沿いでにぎやかに酒盛りをしている花見客を尻目に、沖縄では、花見の宴会という習慣が浸透しておらず静かに観賞できることがありがたいと思う。
 米国の首都ワシントンDCのポトマック川沿いの12種のソメイヨシノ、3020本。歴史をひも解けば、日露戦争終結の際、ポーツマス条約の仲介をした米国への謝意と両国の友好を兼ねて、1910年に東京都から苗木2千本がワシントンDCに贈られてきたが、害虫が付き病気になっているのが発見され、すべての苗木が焼却された。日本側は研究と試行錯誤を重ね、ようやく1912年2月に横浜港から6040本の苗木を輸送させた。無事に着いた苗木の半分は、ニューヨーク市にも贈られた。当時の米国政府の昆虫局長は、「このような完全な輸入植物を見たことがない」と日本側の技術の高さに驚いたという。
 ポトマック川沿いのSAKURAは、ゴージャスそのもの。「美しい私を見て!」と言わんばかりに自信たっぷりに咲いている。自己主張の強い今風の女性に似ている。2012年、ワシントンのSAKURAは、植樹100周年を迎える。
(鈴木多美子、ワシントンDC通信員)