【島人の目】心の糧


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 4月12日付本紙掲載の私のコラム「明日の人間育成」でジェイム・エスカランテのことを書いた。より良い生活を求めてボリビアからアメリカに移住したのが35歳の時、ロサンゼルスでコーヒーショップの皿洗いをしながら勉強を続け、ガーフィールド高校の数学教師になった彼は偉大な功績を残し、全米最優秀教育者賞をはじめ十指に余る賞を受けた。

 同コラムを読んで私の小中学校の一期後輩であるS氏は「貞夫先輩、貴殿の沖縄人や日本人を鼓舞する文章は教育者的です。きっと読者に大きな影響を与えているのではないでしょうか」と感想文を電子メールで送ってきた。
 同氏はまたもう一つのコラム「おけいと沖縄」の中で、今後の歴史に負の財産を残してはならないと、早稲田大大学院修士課程で沖縄の研究に取り組む波照間陽さんの思いに対して「沖縄人は今でも虐げられていますが、徐々に『自己主張』を強めています。琉球大学60周年記念行事の一つ『江戸立ち』探検隊は去る3月1日から12日まで那覇から江戸までの道のりを当時の人々がたどった道のりを巡り、歴史の再体験と現代的歴史観の体験をしてきました。沖縄の従属という観点ではなく主体的な江戸立ち観を見いだしてきました。波照間陽さんもきっとこのような研究をしているのでしょう。すばらしいエッセーです」と、さらなる感想文を寄せ波照間さんと私に感動を与えた。
 エスカランテには後日談がある。晩年彼は「生涯を通して後悔していることはガーフィールド高校を去ったことである」と述懐した。惜しまれながら同校を去り、その後の指導方法が批判を浴び、「脚本」通りにいかなかった人生に自分を戒めた。
 人間誰しも最盛期がある。その時期に慢心を慎んで、後悔しない人生を歩もう。エスカランテの教訓を生かし、それが心の糧となるように、努力を続けていきたい。(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)