【島人の目】ノーベル平和賞


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 マスコミをにぎわせている核密約問題。「核抜き、本土並み」を条件に沖縄の祖国復帰を実現させノーベル平和賞を受けた佐藤栄作元首相は、公には非核三原則を表明したが、実は米国の核の傘を求め、「非核三原則は、ナンセンスだ」と米国政府に公電で発言した事が米公文書から明らかにされた。

 さらに、沖縄への核持ち込みに関する合意文書が出てきたりと、佐藤元首相は、全世界の人を欺いた、とんだ茶番劇を演じていた訳だ。
 ノーベル賞委員会に「佐藤氏を選んだのは、ノーベル賞委員会が犯した最大の誤り」と言わしめた。
 アメリカ大統領で現役でノーベル平和賞を受賞したのは、日露戦争で両国の調停に努め、和平交渉に尽力した26代セオドア・ルーズベルトと平和14カ条と反帝国主義等によって受賞した28代のウッドロウ・ウィルソンがいる。
 しかしながら、この2人の受賞もノーベル平和賞に値するのか物議を醸したのである。ルーズベルト大統領は、軍事力を盾にした「こん棒外交(Big Stick Policy)」をし、ピースメーカーではなく、「戦争屋」と言われた。
 一方、ウィルソン大統領は、日本やドイツへの開戦時に、愛国団体をけしかけナショナリズムをあおり、反戦運動等を弾圧した。ノーベル平和賞の基準があいまいな上、政治絡みが見え隠れする。
 余談だが、あの非暴力思想のインド独立運動の指導者ガンジーは、5度もノーベル平和賞候補になったのにもかかわらず、固辞したという。後に、「マハトマ・ガンジーを受賞者から漏らしたことは大きな罪」と言われた。
 さて、ノーベル平和賞受賞は、時期尚早だったようなオバマ大統領。「核なき世界」を提唱しているが、世界の90%の核を保有する軍事大国であるだけに今回の受賞は、言葉だけが一人歩きしている感じがしてならない。
(鈴木多美子、ワシントンDC通信員)