【島人の目】栄光の光と影


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 シンガポールでは今年に入り、地下鉄各路線をつなぐ環状線やカジノを含む二つの大型総合リゾートがついにオープンした。どのオープニングセレモニーも各界著名人が参加し、大変優雅に行われた。私を含め、オープンを待ちわびたシンガポール人や外国人、老いも若きもみなそれぞれ、施設を訪れ、エンターテインメントを楽しむのである。

 しかし、施設を楽しむほとんどの人が、大型施設を建設する過程で、数年間に及ぶ24時間連続の工事が行われ、事故なども多く発生して、地下鉄でも、大型リゾートでも名もなき外国人労働者が亡くなっていることを知らない、または過去のニュースを忘れてしまっている。
 シンガポールでは建設などの3K(きつい、汚い、危険)分野はほとんどが、タイ、バングラディシュ、パキスタン、インドなどからの出稼ぎ労働者が占めている。また、そのほとんどの労働者たちは母国に家族を残しながら家族のために、過酷な労働現場、生活環境に耐えながら、シンガポール経済成長の最底辺部分を本当の意味で支えているのである。
 私は自社の店舗改装をする時に、睡眠時間を削り、オーナー側や政府の厳しい納期や規格に合わせるために苦労している下請け企業、外国人労働者と共に徹夜作業することも多々ある。その時に疲労とペンキなどのにおいでフラフラした本当に危ない、危険と隣り合わせの外国人労働者を多く見てきた。大型施設なら危険度は何倍も大きい。
 シンガポールの新しい時代を象徴する大型施設を楽しむ人々や政府関係者の笑顔、労働者の疲労しきった目。この両極端な光と影を考えずにいられない。
(遠山光一郎 シンガポール在住、会社経営)