【島人の目】卒業論文


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 「アメリカでは卒業式のことをコメンスメントと言います。これは『始まり』を意味しますが文字通り、私にとって、卒業とは『終わり』ではなく、『スタート地点』です」。フルブライト留学生でカリフォルニア州立大学バークレー校修士課程ジャーナリズム学部に留学した東京出身の三重綾子さんから無事卒業、現在米国のインターネットサービス大手AOLでインターン(研修生)をしているとの通知が届いた。アメリカは5、6月が卒業の季節だ。三重さんの論文のタイトルは「沖縄の過去、現在、未来」。その一部は「ロサンゼルスに根付くウチナーンチュ・ジャーナリズム」の紹介である。

 比嘉朝儀さんのTJSラジオ局でのディスクジョッキー番組「ハイサイ沖縄」。金城武男さんが毎月発行する新聞「五大州」。私による「アメリカのウチナーンチュの活動の地元への新聞報道」に触れ、「この3人によって開拓されたジャーナリズムは、ロサンゼルスの日系人社会へ沖縄の文化・芸能の広報に寄与した」と結論付けている。
 そのほか三重さんも含めたカリフォルニア大バークレー校の修士課程ジャーナリズム・グループの論文「Okinawa」がワシントン・ポスト紙の電子版コラムに掲載された。同紙のコラムは「日本の一部にありながら、強いアメリカの影響に囲まれて、苦悩する沖縄の姿」との題で始まる。「自分のアイデンティティーとは?」と問い掛け、父親が米軍人、母親が日本人で沖縄生まれだが共に父親の顔を知らずして育った22歳の女性と、民主党衆議院議員の玉城デニー氏にスポットを当てている。
 日本本土の他県と比較して就職難、低給与、良い仕事に恵まれていない、酒席が多く取り締まりが厳重なため「代行運転」なるものがあり奇異に感じたこと。ユタ、芸能、基地問題など沖縄の現在の生活スタイルや、ハワイや米国本土での県系人にインタビューして、あらゆる問題点を指摘、「基地の島沖縄」に課題を投げ掛けている。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)