【キラリ大地で】アメリカ/上原悟さん、明美さん 心癒やす沖縄そば


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ラスベガスで日本食レストラン「さとや」を経営する上原悟さんと明美さん夫妻

 ラスベガスの中心街から車で10分ほど離れた場所にある日本食レストラン「さとや」を経営する上原悟さん(糸満市出身)と明美さん(宜野座村出身)夫妻。2009年2月の開店以来、「沖縄そばを出す店ができた」とうわさが人を呼び、今ではラスベガスに住む県系人の新たな心のよりどころとして親しまれている。当地に住む県系人は少なかったが、この店の誕生をきっかけに、ラスベガス沖縄県人会も発足した。

 上原夫妻は1983年に沖縄で結婚。米国へ移住後、悟さんは、アラスカでの漁業やロサンゼルスの有名店での修業を積んだ後、ラスベガスで自身の店を持つという夢をかなえた。「サブプライムローン問題など不況の波が直撃した経済的に一番苦しい時期の開店。今でも苦しいが、逆に家族の絆(きずな)を強めてくれた」と笑顔で話す。
 メニューには、沖縄そばをはじめ、ゴーヤーチャンプルーやタコライスといったなじみ深い料理も。「常連客が増え、自分の家みたいだといってくれるのが一番うれしい」と語る明美さんが心掛けているのは、「人との絆を大事にすること」。仕事の疲れを癒やしに来る人のために、「沖縄そばだけは切らさないようにしている」と心を砕く。店に来ていた県出身の常連客に話を聞くと「遠くにある故郷が引っ越してきたようでみんな喜んでいる」と語る。
 ラスベガス市が誕生したのは1905年。カジノが31年に合法化され、エンターテインメントやコンベンション施設などが加わり、砂漠の街から変容を遂げた。ギャンブルに大金を投じるのはいとわないが、食事はギャンブルの次、主流は食べ放題スタイルという特殊な土地柄が生まれた。
 日本食レストランでもそうした店は多いが、上原さんは「作り置きされたものではなく、心のこもった料理を提供したいから」と、こだわりを大事にする。「この料理が食べたいからあの店に行きたいと言われるようになりたい。将来は、ラスベガスという土地で沖縄の食材を発信する店に成長させたい」と謙虚な姿勢の裏に強い意志をのぞかせる。
 現在、ラスベガスには日本食レストランは約100軒。日本人経営者は約1割で、県出身者は上原さんが初めてだ。8月28日にはハワイから沖縄県人会を迎えた。「まずは、地元の人々に愛される店を目指したい」という上原夫妻の夢は、着実にはぐくまれつつある。(平安名純代通信員)