【島人の目】正念場


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 1998年の沖縄県知事選に官房機密費3億円が自民党候補側に投入されたとする暴露発言があった。
 実は、この機密費の件は、国際政治学者、チャルマーズ・ジョンソン氏の2004年出版の著者「帝国アメリカと日本、武力依存の構造」の中で言及されている。

 ジョンソン氏は、当時、米国にとっては、基地に反対する大田昌秀知事(当時)は、邪魔であり、何が何でも東京とワシントンになびく候補者に当選してもらう必要があったと言う。さらに、ペンタゴンにせき立てられ日本側は、内閣官房長官が沖縄問題の私的諮問委員会をつくるなどして、米軍基地のある市町村に最高1千億円の振興策支援を提言したり、内閣官房機密費から選挙資金を流した―などの状況があったと紹介されている。
 それだけではなく、中央政府は、大田知事との接触を控え、通常の補助金まで打ち切り、沖縄経済を不振に陥し入れる政策を取った。その結果、沖縄経済を低迷させた非現実的な知事だとのネガティブキャンペーンを成功させた、これが98年の知事選の内幕としている。政府の思惑で当選した沖縄県知事は、米国と東京の体のいい下僕だったと思われたよう。
 ワシントンと東京に、思いのまま手玉に取られ、金で操られてきたような沖縄。今年、行われる県知事選に日本と米国の両政府は、またもや、あの手、この手で懐柔策を引っさげての交渉か脅しを掛けてくるのであろう。もうすでに名護の新市政に対しては、政府のいじめが始まっているようだ。米軍再編交付金が先延ばしされている状況がある。
 沖縄県人が今、日米安保条約が沖縄県人の生活を脅かすことで日本本土のみの安全を保証する代物だということを身をもって感じているのなら、今こそ毅(き)然(ぜん)とした態度を取るべき正念場ではないかと思う。
(鈴木多美子、米バージニア通信員)