【アメリカ】「スタンディング・アーミー」伊映画祭で1位


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 イタリア北部の人口11万人の小都市ヴィチェンツァやコソボ、沖縄など5カ国の住民らの米軍基地との闘争をたどったドキュメンタリー映画「スタンディング・アーミー(駐留軍)」がイタリアで7月に行われたシチリアビエンテ・ドキュメンタリー映画祭で1位を獲得した。

負担を強いられる住民の姿を、国境を超えて浮き彫りにした作品は「米軍基地が存在する意味を問うもの」と高く評価され、米国でも平和団体などが上映を呼び掛けるなどの動きが広まっている。

 映画を制作したのは、トーマス・ファツィさんとエンリコ・パレンティさん。地元で起こった米軍基地拡張計画をめぐる住民の反対運動がきっかけだった。
 米軍は2005年に、約2750人が駐留するヴィチェンツァのカセルマ・エデルレ米陸軍基地にドイツの部隊を吸収し、12年までに欧州最大の基地とする計画を立案。反対する住民7万人が参加した大規模デモが展開されたが、イタリア政府は07年に計画を承認した。08年に当選した基地反対派の市長が、基地拡張の是非を問う住民投票を実施しようとしたのをイタリア最高裁が差し止め、09年も大規模デモが行われた。作品は「ベルリンの壁崩壊から20年もたつのに、なぜ米軍基地が必要なのか」と問い掛ける。
 2人は「住民の反対にもかかわらず、なぜ米軍は世界に基地を拡大するのか」という疑問を基に取材を開始。普天間飛行場返還・移設をめぐり沖縄にも同様の問題があることを知り、09年の11・8県民大会を取材した。沖縄国際大学の米軍ヘリ墜落事故の映像などで普天間の危険性を伝え、「米国との対等な関係を求め、県外移設を主張した鳩山首相は、最終的に辺野古移設案を受け入れたため辞任した」と説明している。
 映画は冒頭で「経済危機なのに米軍事費はなぜ増え続けるのか」とも問う。これに対して識者の意見や住民の闘争を紹介し、米軍は新たな戦争で軍事力を強化し、それを維持するために拡大化していく過程を浮き彫りにした上で「現在の米軍基地は軍産複合体の需要を満たすことが目的だ」と指摘している。(平安名純代通信員)