【島人の目】エーゲ海 白くまばゆい光


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 9月初め、3300余のギリシャの島々のうちエーゲ海に抱かれたドデカネス諸島を訪れた。そのうちの一つコス島は、西表島とほぼ同じ大きさで、西洋医学の父といわれるヒポクラテスが生まれた土地である。

 ヨーロッパとは何か、と問うとき、それはギリシャ文明と古代ローマ帝国とキリスト教を根源に持つ壮大な歴史文明、という答え方ができる。ということはつまり、現世を支配している欧米文明の大本のすべてが地中海にある、ということになる。
 ヨーロッパを知り、そこに住み、ヨーロッパに散々世話になってきた僕は、今後じっくりと時間をかけて地中海を旅し、その原型を見直してみたいと考えている。イタリアを基点にアドリア海の東岸を南下して中東に至り、エジプトからアフリカを回って、スペイン、ポルトガル、フランスなどをぐるりと踏破するつもりである。
 地中海は場所によって呼び名の違う幾つかの海域から成り立っている。エーゲ海はイオニア海とともにその一部を構成するギリシャの碧海(へきかい)である。日光は白くきらめき、目に痛いくらいにまぶしい。陽光は海原を南下するほどにいよいよ輝きを増し、乾ききって美しくなり、イオニア海やエーゲ海で頂点に達する。沖縄の強烈な太陽を浴びて生まれ育った僕が、唖然(あぜん)とするほどの光彩を放つのが地中海の日差しだ。
 神々しいくらいに白いまばゆい光の中で遊びつつ、僕はなぜこれらの島々を含む地中海世界に現代社会の根幹を成す偉大な文明が起こったのかを、しきりに思ったりするのである。
 (仲宗根雅則、イタリア在住、TVディレクター)