【島人の目】シンガポール建国の母


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 10月2日、シンガポール建国の父と呼ばれるリー・クアンユー初代首相、現顧問相の妻で、現首相リー・シェンロンの母である、クワ・ギョクチューさんの89年に及ぶ人生に幕が閉じられた。ほとんど表立った政治的発言などはなく派手なイメージもない方であったが、リー・クアンユーがシンガポールの政策決定では必ず助言を求めたという話は有名である。彼女はリー・クアンユーと同じく非常に優秀で、共に奨学金を争い、イギリス、ケンブリッジ大学に一緒に留学した。

リー・クアンユーが政治家になってからは、法律事務所を経営し夫を財政面でもサポートし、常に彼を支えてきた存在である。
 ここ数年、シンガポールではリー・クアンユーと共にシンガポール発展に貢献した政治家やビジネス界の方々の他界が相次いでいる。リー・クアンユーも今年87歳。妻の訃報(ふほう)の数日前に、症状は軽いながらも胸部感染症で入院していたリー・クアンユーは精神的に参っているだろう。時代の流れを感じるとともに、これからシンガポールがどのように進んでいくべきかなど、シンガポールの現指導者や若者たちが試される時期に来ていると強く感じる。
 数年前の彼女へのテレビインタビューで「リー・クアンユーはハンサムな男の子だった」というコメントにリー・クアンユーがはにかむシーンがある。リー・クアンユーは指導力や調整力がある偉大な政治家であるが、その政敵やルールに反する者には非常に厳しい対応をすることでも有名である。そのこわもての彼が彼女の前ではまるで少年のように映る。彼女はまさに建国の父の最愛の人であり、シンガポール建国の母であったのだ。
 (遠山光一郎 シンガポール在住、会社経営)