【島人の目】皇后陛下のミニチュアハット


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 最近、ウイリアム王子の婚約にちなんで、英王室の女性たちの姿がイタリアのメディアにも頻繁に登場する。そのとき僕はよく皇后さまの奇妙なミニ帽子を思い出してしまう。
 皇后の帽子の形は、体格的にも雰囲気的にも、また恐らく皇后の気分的にもあまり似合わない。英王室的な女性の帽子を、陛下に合わせて作り変えたら自然と小さくなった、ということなのだろう。

 しかし、極端に小さくなった皇后のミニ帽子はもはや帽子ではない。帽子ではないものを帽子に見せかけてかぶるのはいただけない。潔く脱いで帽子なしで過ごされようとしないのは、帽子をかぶることが高貴な人の装いであり、伝統であると信じ、進言する人が周辺にいるのだろうか。
 伝統を守るのは立派なことだが、帽子ではないミニ帽子は偽物であるから伝統を引き継いでいるわけではない。だから、さらりと捨て去ればいいのである。
 ある種の日本人が良いと思い込んでいる英王室の女性たちのファッションセンスは、例えばイタリアやフランスなどでは冷めた目で見られている。特にあの帽子のセンスは、尊大なだけの田舎ファッション、という見方が多いのだ。われらが皇后はあんなものにこだわる必要はない。
 ミニ帽子とは縁遠い着物姿の皇后は、実に上品で優雅で美しい。日本の国を代表する重責を担いつつ、あまたいる着物姿の美人女優など全く寄せ付けない、軽やかで優美な印象を与える。そんな女性がどうしてあのおかしなミニ帽子にこだわる必要があるのだろうか。 (仲宗根雅則 イタリア在住、映像ドキュメンタリー作家)