【アメリカ】沖縄の矛盾、学生に 不平等、歴史から研究


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 2010年6月、インターナショナルヘラルドトリビューン(International Herald Tribune)紙に掲載された「The Okinawa Question」の論考を投稿したのが、リッチモンド大学東アジア歴史学科の准教授、ルー・ジーメイ(盧詩梅)さん、36歳だ。

 沖縄の基地問題に関心を持つルーさんは昨年、鳩山由紀夫前首相の沖縄訪問の際、県庁前での『怒』のカードを掲げる抗議集会現場で沖縄の生の声を聞いた。記事には、鳩山前首相の政治家としての歴史認識を疑うとし「14年間もくすぶっている普天間基地の移転先問題が複雑で難しい問題であるにもかかわらずなぜ簡単に国外、県外と約束し、簡単にほごにしたのか」と疑問を投げ掛け、鳩山前首相の退陣が与えた沖縄への影響の大きさを強調する。
 ルーさんはさらに「沖縄に負わせている基地の重荷は、日本本土のみに利益をもたらす日米安全保障条約によるもので、底辺には日本本土の沖縄への差別意識があり、鳩山前総理の裏切りは、沖縄県民にその被差別的感情を助長させる結果になった」と言及している。
 2002年、ルーさんが大学院生の時に出席したUCLA(カリフォルニア大ロサンゼルス校)でのカンファレンス(会議)のテーマは「日本の中にいる他者」。そこで、74%もの基地の負担を強いられている沖縄の存在を初めて知り、沖縄への不平等さが大きな問題だと興味を持つきっかけになった。その後、沖縄へ何度も足を運び、平和をアピールする観光立県でありながら戦争に加担する基地の島でもある沖縄の矛盾に注目し、沖縄が研究テーマの一つとなった。
 ルーさんは、シンガポール生まれ。米コーネル大学で博士号を取得し、一貫して日本の歴史を研究してきた。日本の文化財制度を専門とし、卒論のテーマは「首里城」。首里城に関しての論文は、アジア太平洋地域の情報をネット上に発信している「ジャパンフォーカス」に掲載された。
 琉球処分後の日本と沖縄の関係をひも解き、首里城が国宝となり、城が沖縄神社に変えられ、正殿が拝殿になったいきさつを取り上げ、「同祖論」を正当化するための政策だったと説く。
 リッチモンド大学で教壇に立って4年。今期の講義は「東京裁判」と「日本の戦争の記憶」について。ルーさんは「不平等な扱いで犠牲を強いられている沖縄の現実を、教育者として学生たちに伝えるのは自分の任務。沖縄を学問的問題として理解したい」と日本語で熱弁する。今年も夏に沖縄訪問を予定している。(鈴木多美子通信員)